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皆さんは、「頭蓋変形」という言葉を聞いたことがありますか?
頭蓋変形とは、いわゆる頭の形がいびつになる症状のこと。
病気が原因で起こる二次的な症状以外に、同じ姿勢で寝続ける(向き癖)だけでも、柔らかい新生児の頭蓋骨は変形してしまうことがあります。
病的な原因による頭蓋変形
病的なものの代表は、頭の中に溜まっている髄液(通常は生産・循環・吸収を繰り返しながら一定の容量を保っています)の生産、循環、吸収の障害から頭が異常に大きくなってしまう『水頭症』や、本来は頭蓋の成長と共にゆっくり時間をかけて閉じていく縫合線が部分的または全体にわたり早期に癒合してしまうことで、頭蓋の成長が妨げられてしまう『頭蓋骨縫合早期癒合症』等が挙げられます。
頭蓋骨縫合早期癒合症の発症率は非常に低く、4~16/10,000人と言われています。
この疾患は遺伝的要素が高く、広く知られる話(Favazza,M.D.1996)としては、紀元前のエジプトの王、アケナテン(King Akhenaton)が矢状縫合における癒合症で、彼の親族や子孫達にもその疾患があったとされています。
有名なツタンカーメン(King Tut)でその血統は絶えますが、彼もまた同様の疾患を受け継いでいました。
当時、王家の頭の形状をステータスとしていたエジプトの上流階級層では、王の長すぎる頭の形状を真似るため、我が子の頭に布を巻きつけて長く矯正するようになり、それが慣例となり数千年続いたそうです。
当時、頭蓋骨縫合早期癒合症という病気はまだ発見されていませんでしたが、赤ちゃんの頭蓋再形成術は既に行われていたというわけです。
病的な原因のない頭蓋変形
これに対し、疾患が全くないにもかかわらず、頭の形が歪んでいる赤ちゃんがいます。
このような変形は、出生前あるいは出生後(またはその両方)の頭の形成途中で頭蓋骨がまだ柔らかい時期に、偏った外力がその形成を妨げ続けた結果起こるもので、「位置的頭蓋変形症」と称されます。
頭の形状とその影響に対して非常に関心が高い米国において、位置的頭蓋変形症の赤ちゃんの発症率は、統計によると1/60人~1/300人と報告されております。
日本においては、位置的頭蓋変形症に関心が低く、保護者の方が「あれ?ちょっと頭の形が・・・」と違和感を覚えて乳児検診の時などに小児科医に相談しても「問題ない」「ほうっておいたら治る」などと応じられることが殆どです。
そのため、日本における位置的頭蓋変形症の正確な発症率は不明ですが、米国のそれより顕著であることが想像できます。
「位置的頭蓋変形症」には、具体的な原因については下記をお読み下さい。
出生前から起こる:先天性変形
出生後の環境で起こる:後天性変形
頭蓋変形の原因を見分けるためには
位置的頭蓋変形症は、外見的には頭蓋骨縫合早期癒合症の赤ちゃんと似ている場合があるので、レントゲン撮影(場合によってはCT等)で見分ける必要があります。
この検査を受けずに位置的頭蓋変形症と安易に判断することは危険です。
※赤ちゃんの頭の形のお悩みについての詳細は下記のページにて詳しく説明してありますので興味のある方はご参照ください。
赤ちゃんの頭の形について
社会医療法人 甲友会 西宮協立リハビリテーション病院 院長
日本脳神経外科学会認定脳神経外科専門医
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